2023年12月8日金曜日

放射線治療科教室説明会2023秋 学内ポスター

  ご無沙汰しています、札幌医科大学放射線医学講座のフェローの眞船です。卒論がなかなかacceptされず博士号が取れずにいます。😇 それはさておき、今年も教室説明会のシーズンがやってきました。近頃この仕事も若手に譲りつつあり、あと幾度携われるか分かりませんが、引き続きよろしくお願いいたします。

 今回のポスターは、私がとても愛するRPGゲーム『Fallout(フォールアウト)』にインスパイアされており、一段とマニア向けな内容になっています。


 Falloutはその第1作が1997年にアメリカで誕生し、その後も様々な続編が作られ続けている人気の高い作品で、2024年にはTVドラマ化されることになっています。1950年代のアメリカのアトムパンクな世界観を背景に、すべてが原子力で動くという希望に満ち溢れた近未来とその後の核戦争で荒廃するという悲劇的な結末が、対照的かつユーモアに描かれています。

 作中には放射性物質入りのコーラが回復アイテムとして登場し、これがなんと『Nuka-Cola(ヌカコーラ)』と名付けられていたり、敵役として現れる遺伝子変異した人型怪獣は『Super mutant(スーパーミュータント)』と呼ばれたりします。他にも、近未来の一流ロボットメーカーは『General Atomics International(GAI)』であったり、放射線を放つ巨大ゴキブリは『Radroach(ラッドローチ)』などと、ネーミングセンスがどれも秀悦です。ゴキブリと格闘すると主人公は放射能に汚染されますが、除染アイテム『Radaway(ラッドアウェイ)』を使うことで回復できます。設定がよくできており、放射線科医として大変むず痒い気持ちになります。

 これは当科の先輩から伺った話ですが、UCSFにいらっしゃる小線源治療の大家は自身のオフィスにRadroachのポスターを貼っているそうで、Falloutの世界観を愛する放射線科医はどうやら私だけでないようです。


 さて、今年の2月に本学の第3放射線治療室の加速器が更新されました。搬入された治療器こそがまさにポスターに描かており、Siemens Healthineers製(旧Varian)のTrueBeamという機械です。サイズが大きいため分解された状態で搬入されますが、組み上げた後も設置精度の調整(芯出し)に何週間もの時間を要します。


 搬入や精度調整の際は外装を取り外したまま行いますので、加速器の中身が剥き出しになっています。私はこの搬入作業を見ているのがとても好きで、治療装置がどのような構造になっているかを知ることができ、いつも大変勉強になります。


 裸の加速器は大変無骨で、外装があるときのスマートな印象とはまったく異なります。たくさんのケーブルやパイプが複雑に繋がれ、案外アナログな機械だと分かります。そんな構造物を眺めていると、あのレトロフューチャーな世界観のPower armor(パワーアーマー)を想起させ、よし、若干の無理があるけどポスターを作ってみようかと思い立ったのでした。


 その昔、人類は原子力に大きな夢と希望を抱き、未来を空想することに酔いしれました。これは被爆国である日本においても同じで、アニメ『鉄腕アトム』が一世を風靡したことでも分かります。しかし時代が進む中で、核武装による政治的緊張や原子力事故による悲劇が繰り返され、人々はこの夢が簡単ではないと気づきます。

 Falloutの世界観は、こうした夢と現実のギャップ、過去と未来のギャップ、アナログとデジタルのギャップを突いており、多くの人を魅了しているのだと思います。

 日本は超高齢化社会となり、世界は戦争や経済危機が絶えず、未来を悲観する読者もきっといるでしょう。しかし鉄腕アトムから70年近く経ったいま、時代はやっと核分裂から核融合へシフトしつつあります。研究者たちの地道な努力によって、かつて人々が抱いた夢は想像よりも優れた形で実現しようとしています。

 放射線治療においても、これからたくさんの変化と進歩がやってきます。私はそんな未来がとても楽しみです。世間の期待より少し時間を要すかもしれませんが、いつかすべての癌を放射線で倒せるようになる日を願いつつ、引き続き臨床と研究に勤しんで参りたいと思います。

2022年11月29日火曜日

放射線治療科教室説明会2022秋 学内ポスター

 お久しぶりです、眞船です。コロナ渦に揉まれながら臨床・研究に勤しんだ2022年はあっという間に過ぎ、もう残すところ1か月となりました。皆さんにとってはどのような一年だったでしょうか。

 これまでのポスターは、外照射治療やIVRといった当科の看板診療を題材に手掛けてきました。一方で今回は、当科の第三の持ち味である核医学治療がテーマです。



 第7波が来る前の話ですが、いつも研究指導して頂いている上司と学生を囲んで飲んだことがありました。いい感じにお酒が入ったところで、上機嫌になった上司が私たちにこう言いました。 


僕たち放射線治療医はさあ、スナイパーなんだ。 
難しい依頼もたくさんあるけれど、癌を撃ち抜くためにあれこれ考える、 
そういう仕事なんだ。

 

ボス、学生さんを前に完全にデューク東郷です。

 千鳥足になりながら帰路につき、上司の言葉を思い出して、あゝ確かにゴルゴ13と放射線治療をかけあわせるのは良いかもしれない、と思いました。しかし、不吉な「13」をどうも活かしきれない。何かないかな、と酔っ払った頭であれこれ考えたところ、

(゚Д゚)ハッ!ヨード131があるじゃないか!

と気づいたのです。

 いつも核医学治療に努めておられる某医局長に役柄を頼み込み、若干(かなり)困惑されつつも、制作に取り掛かることができました。こんなど阿呆なギャグにひと肌脱いでくれる医局長、また、こんな自由奔放な僕の閃きを受け入れてくれている本講座の皆様には、大変感謝しております。深く御礼申し上げます。

 今回はその制作過程をタイムラプスでご覧いただけます。こちらからどうぞ。



 さて、学生さん向けにまた少し漫談をしましょう。放射線診断機器や治療機器の多くは電気を消費して放射線を発生させており、歴とした電化製品と言えます。一方で、放射線を放つ物質(=放射性物質)を活用することで様々な画像を得たり、病気を治癒する方法もあります。後者のような医学領域は、核医学(nuclear medicine; NM)と呼ばれています。

 放射性物質というと、半減期の長い核燃料や核廃棄物、いわゆるウランやプルトニウムを思い浮かべる方が多いでしょう。しかしそのような核種は人体への影響を調節しにくいため、現在の医療用核種は、半減期が数時間〜数十日ととても短いものが用いられます。今回のポスターにある放射性ヨウ素131は半減期が約8日で、医療用原子炉から抽出・生成し、放射線の強さを適切に調整して患者さんの元へ届けられます。

 原子炉というと、どうしても一般には原子力発電を連想しやすく、人によっては負のイメージを抱くかもしれません。しかしそこから生成された放射性物質は、ときに医療現場で人命を救い、ときに埋設配管の亀裂を見つけ出し、ときに新鮮なバナナを海上輸送するのに役立ちます。危険だからこの世から亡くなればいい、という単純なものではありません。

 その危険性を十分に熟知し、冷静かつ的確に付き合っていく。核医学の魅力は、まさにゴルゴ13の魅力と同じなのです。

2022年7月30日土曜日

Information Sessions 2022

This article is written by Dr. Shoh Mafune, a radiation oncologist at Sapporo Medical University Hospital.

  I made another poster as I did last year for information sessions of our residency program. This poster is a tribute to the best shark movie everyone knows and we need to share to understand its significance for radiation oncology.


  The fundamental goal of radiation therapy is to deliver radiation to a target such as malignant tumor while minimizing the amount of radiation absorbed in healthy tissue. Beam shaping is an important way to avoid radiation to healthy tissue and critical structures. Conventional collimators, called "jaws", are used to shape a rectangular treatment field; however, since the treatment volume is usually not rectangular, additional shaping is required. Therefore, modern linear accelerators (LINAC) are equipped with separate alloy blocks called multileaf collimators (MLC), which are made of lightweight, highly shielded tungsten and allow the intensity of the radiation to be adjusted by rapidly moving the MLCs. 

  In short, LINACs have two types of variable collimators: jaws, which roughly shape the radiation, and multileafs, which finely adjust the radiation.


  This "white shark", Synergy made by Elekta, in our hospital has a pair of great jaws and as many as 80 MLCs. Since radiation is invisible to eyes, it is difficult to know if the treatment field shaped adequately by the collimators. This white shark can also output blue light to make the shape visible.


  I created the special plan with a radiation therapy planning system (TPS) to give him a number of teeth.


  This is how the mysterious photos were created, as if we were under the sea. I would be very happy if you share this article.


***

Shoh Mafune, M.D.
Fellowship (Radiation Oncology)
Medical School: Sapporo Medical University
Internship: Aizawa Hospital
Radiology Residency & Radiation Oncology Fellowship : Sapporo Medical University

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