お久しぶりです、眞船です。コロナ渦に揉まれながら臨床・研究に勤しんだ2022年はあっという間に過ぎ、もう残すところ1か月となりました。皆さんにとってはどのような一年だったでしょうか。
これまでのポスターは、外照射治療やIVRといった当科の看板診療を題材に手掛けてきました。一方で今回は、当科の第三の持ち味である核医学治療がテーマです。
第7波が来る前の話ですが、いつも研究指導して頂いている上司と学生を囲んで飲んだことがありました。いい感じにお酒が入ったところで、上機嫌になった上司が私たちにこう言いました。
僕たち放射線治療医はさあ、スナイパーなんだ。
難しい依頼もたくさんあるけれど、癌を撃ち抜くためにあれこれ考える、
そういう仕事なんだ。
ボス、学生さんを前に完全にデューク東郷です。
千鳥足になりながら帰路につき、上司の言葉を思い出して、あゝ確かにゴルゴ13と放射線治療をかけあわせるのは良いかもしれない、と思いました。しかし、不吉な「13」をどうも活かしきれない。何かないかな、と酔っ払った頭であれこれ考えたところ、
(゚Д゚)ハッ!ヨード131があるじゃないか!
と気づいたのです。
いつも核医学治療に努めておられる某医局長に役柄を頼み込み、若干(かなり)困惑されつつも、制作に取り掛かることができました。こんなど阿呆なギャグにひと肌脱いでくれる医局長、また、こんな自由奔放な僕の閃きを受け入れてくれている本講座の皆様には、大変感謝しております。深く御礼申し上げます。
今回はその制作過程をタイムラプスでご覧いただけます。こちらからどうぞ。
さて、学生さん向けにまた少し漫談をしましょう。放射線診断機器や治療機器の多くは電気を消費して放射線を発生させており、歴とした電化製品と言えます。一方で、放射線を放つ物質(=放射性物質)を活用することで様々な画像を得たり、病気を治癒する方法もあります。後者のような医学領域は、核医学(nuclear medicine; NM)と呼ばれています。
放射性物質というと、半減期の長い核燃料や核廃棄物、いわゆるウランやプルトニウムを思い浮かべる方が多いでしょう。しかしそのような核種は人体への影響を調節しにくいため、現在の医療用核種は、半減期が数時間〜数十日ととても短いものが用いられます。今回のポスターにある放射性ヨウ素131は半減期が約8日で、医療用原子炉から抽出・生成し、放射線の強さを適切に調整して患者さんの元へ届けられます。
原子炉というと、どうしても一般には原子力発電を連想しやすく、人によっては負のイメージを抱くかもしれません。しかしそこから生成された放射性物質は、ときに医療現場で人命を救い、ときに埋設配管の亀裂を見つけ出し、ときに新鮮なバナナを海上輸送するのに役立ちます。危険だからこの世から亡くなればいい、という単純なものではありません。
その危険性を十分に熟知し、冷静かつ的確に付き合っていく。核医学の魅力は、まさにゴルゴ13の魅力と同じなのです。
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