投稿者:宇佐見陽子
今回は4年に一回の国際学会であったため、発表から質疑応答、館内放送に至るまで何から何まで英語でした。にもかかわらず、参加者の推定9割以上が日本人という少し奇異な状況がありました。
率直な感想ですが、『質疑応答も含めすべての工程を英語で行う事は、現時点では弊害の方が多い』と感じました。例えば、英語という理由だけで、ディスカッションが全くはずまなかったり、もっと沢山質問があったであろう素晴らしい発表までもが、質問なし、という残念な状況が見受けられました。(IVR関連の学会・研究会では熱い討論が繰り広げられるのが普通です。)
医療の国際化が進む中で、英語をもっと勉強しなくてはいけないと感じる良い機会ではあったのですが、少なくとも質疑応答は日本語でOKくらいにしておくのがバランス的に良いのではないかなと考えます。
その中で、自分と同じくらいの先生方が流諜に英語を話されていた光景は印象的でとてもよい刺激になりました。
今回の参加目的は、
- 自分の動物実験の口演発表
- 他施設の内臓動脈瘤治療の発表
- 救急系の発表
- 英語発表プレゼンテーションのコツ
に絞って、聴講しました。以下それぞれについて、述べたいと思います。
1. 自分の動物実験の発表
発表内容は『コイル塞栓瘤の病理組織学的差異』で、皆様の協力もあって、何とかかんとか英語発表を乗り切れました。発表後には他施設からもとても興味深い実験ですね、という好評価をいただけて、率直に嬉しかったです。座長からの質問でP,FP群でなぜ内膜が厚くなるのですか?と質問されました。PGLAは炎症を起こすからですと答えました。リアクションの多かった部分は意外にも瘤の組織云々よりも、動脈瘤モデルをどうやって作ったんですか?というところでした。以上より、内臓動脈瘤の塞栓術について生物学的因子にまで突き詰めて考えている放射線科医はほとんどいないのではないか?と感じられました。
2. 他施設の内臓動脈瘤の発表
天理病院からの脾動脈瘤の臨床経験10例のポスター発表が印象的でした。瘤容積やVERを算出する際に、3DDSAからの算出と瘤径からの算出で誤差が生じるとのこと。3DDSAの方がVERが少なく算出され平均VER20.8%(瘤径)vs14.7%(3DDSA)との事でした。また、Fiberを使用して塞栓した症例5例において再発はなかったとの記載もありました。これらの2点は我々も同様の認識をもっており、やはりそうなのかと今後の自信になりました。
3. 救急系の発表
多発外傷のご発表で済生会横浜市東部病院の船曳先生のご発表が印象的でした。骨盤骨折と右腎動脈同時損傷の症例報告。SENSEという概念(後述します)に従い、まず右腎動脈にバルーンカテーテルを挿入し、血流を遮断しておき、時間をかせぐ。その間、対側アプローチで両側内腸骨動脈を速やかに塞栓する。その後、また右腎に戻って、右腎動脈をコイルで塞栓する。というものでした。
SENSEとはS(Speed of bleeding)E(Easiness of control bleeding) N(number of bleeding sites) S(Space of bleeding sites) E(Endpoint of embolization)という因子をもとにIVR治療戦略(治療部位の優先順位)を決めたらいいですよ。という概念。この症例でいうとSは腎>骨盤、Eは骨盤>腎(バルーンカテなら腎>骨盤) Nは2、Sはいずれも後腹膜、Eは血行動態の安定化。という事です。
我々も多発外傷症例があります。血行動態に一番関連する部位から塞栓していくのですがその際に塞栓に要する時間を考えすぎると、優先順位を見極めるのが難しいことがあります。とても勉強になりました。
4. 英語発表プレゼンテーションのコツ
話し言葉と書き言葉の違いがあり、プレゼンではこの中間の言語になる、との事。また、英語圏の施行は単純明快ストレートであるが、東洋人は螺旋状の思考回路である。英語でプレゼンするときは、単純明快が好まれるとの事。いつも長文すみません。お付き合いくださりありがとうございました。
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